オーラルヘルスを考えよう - ジャパンオーラルヘルス学会

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オーラルヘルスを考えよう

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妊娠期(マタニティ歯科)

妊娠による、つわりやホルモンバランスの変化、食習慣やライフスタイルの乱れなどの影響により、口腔内の環境が悪化しやすくなります。つわりによる嘔吐を繰り返すと、歯磨きができなくなったり胃酸の影響で歯が溶けたりするのでむし歯になりやすくなります。また、妊婦はホルモンバランスの変化で歯周病になりやすくなることがあり、歯肉が腫れることがあります。歯肉が腫れているとその影響で胎盤が刺激され陣痛が早まり、早産や低体重児出産の可能性があると言われています。歯周病による早産・低体重児出産の危険率は4.7〜7.5倍になると示している研究もあります。
 このように、妊娠期ではブラッシングなどのセルフケアに加えて、歯科医院でのプロフェショナルケアも重要となりますが、妊娠初期(0〜15週)や妊娠後期(32週以降)は切迫流産の危険や陣痛の可能性が出てきますので、妊娠中期(16〜31週)の安定期に口腔衛生管理や治療を行うようにしましょう。


−1歳(胎児期)

妊娠5週目くらいから中枢神経や心臓が形成され始めます。歯のもとになる歯胚は、こどもの歯(乳歯)が妊娠9週目からつくられ始め、おとなの歯(永久歯)も妊娠12週目くらいからつくられ始めます。妊娠中は食の嗜好が変化したり、食事の回数が増えたりします。その中で、胎児がしっかりと発育することができるように、また丈夫な歯が出来上がるようにバランスの良い食生活を心がける必要があります。喫煙は胎児に悪影響を与えますので、特にこの時期では禁煙しましょう。


乳幼児期

乳歯はだいたい生後6ヶ月くらいから、まず前歯が生えてきます。2歳6ヶ月くらいで一番うしろの奥歯が生えてくると乳歯20本が全て生え揃います。しかし、個人差が大きく、半年程度前後することもあります。乳歯の奥歯が生えてくる1歳半〜3歳くらいの時期は「感染の窓」と呼ばれ、むし歯の原因菌であるミュータンス菌が口の中に感染する最も危険な時期であります。ですので、お子さんの歯磨きを確実におこなうだけでなく、感染させないためにも家族全員も口腔ケアを注意しなければなりません。
乳歯は食べ物を噛むのが一番の役割でありますが、それ以外にも顎の発達や正しい発音をするのにも必要であり、さらに永久歯に生え変わるからと言って疎かにすると、永久歯は生える場所の目印を失ってしまい将来歯並びを悪くしてしまいますので、歯磨きをしっかりおこない乳歯を大切にしましょう。
この時期の歯磨きは、まず上の歯が生えてきた段階でお母さんによる「寝かせ磨き」からはじめます。そして、3歳くらいまでには歯磨きの習慣をつけるように、いろんな工夫をして楽しく習慣つけてください。また、むし歯の原因となるような授乳習慣(就寝時の授乳など)の改善や、保護者が毎日仕上げ磨きをする習慣をつけることも大切です。
食事に関しては、赤ちゃんの時期に体験した味で一生の味覚を左右すると言われているので、離乳食はとても大事であります。また、甘い物はむし歯の原因になるので、乳幼児期は間食や水分補給に糖分の少ないものや、むし歯になりにくい甘味料のもの(キシリトールなど)を選択するような工夫が重要です。
日本小児歯科学会では上下の前歯が生えてきた頃から歯科受診し、フッ化物歯面塗布などの処置によって歯を強くし、むし歯から歯を守る習慣をつけることを推奨しています。


学童期

小学生から中学生にかけて永久歯が生えてきます。一般的に6歳頃から前歯が生え変わり、奥歯が生えてきます。その後、12歳くらいで一番うしろの奥歯が生えて親知らずを除いた永久歯28本が生え揃います。この生え変わりの時期は、歯の高さが揃っていなかったり、歯の表面が成熟していかったりするため、むし歯になりやすいです。また、第二次性徴期(思春期)はホルモンバランスが変化するために歯ぐきが腫れて歯肉炎が生じやすくなります。
小学校から中学校へ進学するとライフスタイルが変化し、夜間の間食が増えたり、心身の変化により健康意識低下が見られたりすることで歯ブラシがおろそかになり歯肉が腫れることが多くみられます。この時期でも定期的に歯科医院へ行き、歯磨き指導に加え虫歯になりにくい予防処置をおこなうことが大切です。また、甘味飲料や食品に関して知識を習得し正しい生活習慣を身につけておきましょう。9〜10歳の頃に自分自身でしっかり歯磨きを行う習慣をつけると、将来歯周病にかかりにくくなるというエビデンスもありますので、かかりつけの歯科医院でよく教わってください。


青年期〜中年期

青年期に入ると学校歯科検診のようなチェックがなくなってしまい、また就職して仕事が忙しくなりあまり歯科医院へいかなり、口への関心も薄れてしまう時期です。さらに、歯周病になり始めるのもこの時期ですが、歯周病は自覚症状があまりないので知らぬ間に進行しています。しかし、定期的に歯科医院で予防処置をおこない、自分の口の中の状態に合ったブラッシングを教わり実行することで、虫歯と歯周病は防ぐことができるのです。また、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助的清掃器具を使い出すのもこの時期です。アメリカではFloss or Die(デンタルフロスをちゃんとやらないと死んじゃうよ)と言われるほど重要視されているのです。
この時期では虫歯と歯周病以外にも、口の中にはいろんな病気が起きることがあります。口腔がんをはじめとする口の中の粘膜の疾患や顎関節症、口臭やかみ合わせの不調などですが、「歯科ドック」のように口の中の総点検をおこなうことでご自身の健康度をチェックするのも必要です。


中年〜初老期

この時期になると残念ながらむし歯や歯周病で歯を抜くことが多くなり、ようやく口腔ケアの重要性を認識しはじめます。一般的に奥歯から悪くなることが多く、奥歯を抜くとブリッジや部分入れ歯、インプラントといった治療が必要になり歯科医院へ通いだすと共に、仕事なども落ち着き時間にも余裕ができて自分の健康に関心を持ちはじめてきます。
また、糖尿病や高血圧といった全身的な病気になって病院へ通院している方も多くなります。糖尿病のような全身疾患があると、身体の防御機構が低下し歯周病になりやすくなります。また高血圧などの薬の服用により殺菌効果のある唾液が減少することで口腔内が乾燥すると、むし歯や歯周病の危険が高まるので注意が必要です。また、慢性炎症としての歯周炎を適切に治療することで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性があることが最近の研究により明らかになってきています。
中年以上になると口腔がんの発生する可能性が増すため検診が必要です。がんは自分ではなかなか見分けることは出来ませんので、口の中に口内炎の様な出来物が2週間以上治らなかったりしたら、かかりつけの歯科医によく診てもらってください。口腔がん検診を専門的におこなっている施設も最近では増えてきました。また、「歯科人間ドック」では口腔粘膜の検査もおこなっていますので、年に1回の定期的な受診もお口の健康度を確認するにも良いです。


老年期

8020運動を達成するためには若い時からの定期的な予防的歯科受診を行う必要があります。歯を失ってしまうと、残った歯の噛み合わせに対する負担が大きくなることもあり、入れ歯の状態やかみ合わせの具合などのチェックも必要となってきます。
高齢になると全身的な病気も多くなり、他種類のお薬を飲んでいる方も多いと思われますが、薬には口の中にあまり良くない副作用が起きることもあるのです。また、加齢により歯肉が下がり歯の根が露出していることが多いのですが、歯の根の部分はとてもむし歯になりやすいので要注意です。さらに、様々な原因から唾液の量が減っていることが多く、それによりむし歯や歯周病、口臭や口の中の違和感などの症状も起きやすいのです。
この時期には、食事中に食べ物が飲み込みにくいという方も多くなってきます。これは先程述べた唾液の量が減少していることも原因ですが、それ以外に物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下していることが考えられるのです。この状態を放置してしまうと、通常の食事ができなくなってしまうこともありますので、かかりつけの歯科医院でよく相談して検査してもらうようにしてください。

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